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2023年09月23日
10月献立表と小笠原流礼法〜(2)長生公が語る「箸先を汚さない」
10月の献立表はコチラです。
厳しい残暑が和らぎ、充実したメニューに一段と食欲が湧いてきます。学園祭の準備で多忙のさなかの塾生がいる一方、久敬社では、10/22(土)の“千代ヶ丘祭・同郷人懇親会(東京からつくんち)”に向けた準備が進んでいます。
箸先はあんまり汚さぬよう
さて、先月に続く食事作法の話は”箸の汚れ”について。
この話は、約3年前に当新着情報欄で触れましたが、小説家子母沢寛(しもざわかん)の「味覚極楽」(中公文庫、1983)に載録されており、伊丹十三の痛快エッセイ集「女たちよ!」の一節でも引用されています。 「味覚極楽」は、彼が東京日日新聞の記者だった折、食に寄せる思いや逸話などを各界の著名人から聞き取りを行い、同紙へ連載発表したものです。
登場する語り部は小笠原長生公
登場する語り部は、久敬社の生みの親小笠原長行の後を継ぎ、久敬社発展に尽力した久敬社初代社長の小笠原長生です。余談ですが、子母澤寛の小説「突っかけ侍」は長行がモデルになっています。
<語り部:小笠原長生>
昔、私の家の何代目かの人間が京都へ使いに行って、宮中で御膳が出た。「小笠原流の一家の者だ、どんな風にして飯を食うだろう」と、更でだにこんなことにはやかましい公卿さんたちは、興味津々。唐紙障子のかげに隠れて隙見をしている。小笠原は直ちにこれに気づいたので、先ずいきなりお汁もお平のお椀もふたをとると飯の上へざぶりと汁をかけ、その上へお平をまた打ちかけ、また香の物を打ちかけてさくりさくりと食い出した。公卿たちは肝をつぶした。「なあんだ小笠原一家の者だなどといって、あれでは田夫野人にも劣る」というので、頻りに冷笑したが、いよいよ膳部を下げて箸を洗う段になって初めてびっくりした。そんな荒っぽい食い方をしているにも拘わらず、箸の先が二分(6㎜)とは汚れていなかった。小笠原流などといって無闇に形式ばかり論じているように思われているが、そんな薄っぺらな、生半可なものじゃない」ということを示した訳である。
小笠原長生公がお語りになった話はいかがでしたか?
二分(6㎜)しか汚れていない箸の神秘に気づいた、公卿さんたちの一隻眼にも感服の念を抱いてしまうお話ですね。
今では、「箸先五分(約1.5cm)、長くて箸先一寸(約3cm)」と言われます。あるいは4cmまでとも。
要はできるだけ汚さずに食べることです。